Michael Baumann


「ミハイル・バウマンでございますね。ぜひ、お飼いなさいませ。ご主人様にふさわしい美しい犬ですよ」


 あなたの指名に家令は愛想を言った。端末を操作して犬を手配しながら、

「元シークレット・サービスですから、体も頑丈。容貌もひと目を惹きますので、中庭では注目の的になるでしょうな――。飼いならせばいい番犬になってくれるでしょう。

指名が殺到していたんです。ご主人様がしくじったら、喜ぶ連中は多いですよ」

 端末の情報を読んでいた家令の目が一瞬、止まる。あなたがそれに気づき、たずねると、

「――いえ、なんでも。アナルは処女ですが、同性愛経験はあります。よろしいですね」

 そのことはデータにあった。
 あなたがかまわないと告げると家令は、では、と背後を示した。

 大柄な黒人の青年があなたの少し後ろで控えていた。アクトーレスの制服であるダークスーツを着ている。

「ミアイル・バウマンの担当アクトーレスです」

 にっこりと微笑むと白い歯が美しい。アフリカ系フランス人だろう。Hの発音ができないようだ。

 あなたは彼と軽く握手をして、仔犬館に入った。




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